あの夏の「私」


 

今朝、日の出前の西の空。

自転車に乗っていると、至るところの道沿いの木々や、公園内の木立から「ジー」というアブラゼミの声がします。盛大ではない。まだ少し体が温まっていないのでしょう。アブラゼミを100とすれば、ミンミンゼミは3~4の存在感。それでも、アブラゼミの「声」がdrone=持続音だから、ミンミンゼミの長音符と短音符の組み合わせ、また音程もわずかに動く「声」は際立つ。そして私にとって盛夏のセミと言えば、なんと言ってもこのミンミンゼミです。

さまざまの事おもひ出す桜かな

芭蕉の句ですが、この桜のvisionをミンミンゼミのsoundに置き換えてもいいでしょう。また、もう少ししたら聞こえ出すヒグラシの声も互換可能でしょう。(今世田谷区ではアブラゼミ、ミンミンゼミが2大勢力ですが、東宝撮影所辺りとかではクマゼミもいます。ヒグラシはまだ土の中のようです。)

ミンミンゼミの声を聴いていると、小学生だった頃に通った「代官清水」と呼ばれた、真夏でも冷たくておいしい水が流れる場所とその近辺の景色が浮かびます。少なくとも6回の夏のひとときをそこで過ごしたのです。しかもうれしく、ウキウキして。なぜならその代官清水のある場所から坂を下っていくと、大日川と呼ばれる水遊びスポットがあったからです。

伸夫くん、文男くん、三男くん・・・幼馴染みの顔が浮かびます。

水メガネをヨモギの葉で擦ると曇りにくいと確か一歳上の「野生児」伸夫くんが教えてくれました。

1967年の夏には、ビートルズのSgt. Pepper'sの楽曲と思い出が被ります。With a Little Help from My Friendsですね、恐怖を感じず楽しく聴けた数少ない収録曲です。「ミーン、ミンミン」を遠くに聞きながら「Oh, I get by with a little help from my friends」というRingoの歌が脳裏で響いていた。そして「Do you need anybody?」というJohn, Paul, and Georgeの3パート・ハーモニーですね。

「ミーン、ミンミン」を聴いていた小学生の「私」が<今>呼び覚まされるのです。身体は著しく変わってしまっていても、あのとき自分を「私」と言っていた、認識していた「私」が、「それまでの70年に近い人生を送ってきた私」に置き換わっているのです。

不思議なことです。


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