Depressed, but I'm All Right
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NHKBS「フロンティア」で『サイケデリック・ルネサンス 精神医療の最前線』という特集が放送された。 マジックマッシュルーム(psilocybin)、LSD、MDMAなどのサイケデリクス(幻覚剤・精神展開剤)が、医師・専門家の管理下で難治性うつ病やPTSDなどの精神疾患治療に効果があるという最新研究を紹介するものだった。オーストラリアでは2023年に一部が治療薬として承認された点も触れ、科学的な検証と医療現場への導入の動きを報じていた。Beatlesを知る人は、彼らがBob Dylanとのマリファナ体験から変わっていき、アルバムRevolverではLSDでの「トリップ」から着想した曲が<あからさまに>発表されるようになったのはご存じだろう。1965年当時イギリスではLSD摂取は合法、と言うより法整備が間に合っていなかったので、彼らを一概に責められないけれども、非合法化された1966年9月以降も彼らは秘密裏に摂取を続けていたのだ。
旧ブログでも再三書いたけれど、Beatlesを根本家妹弟に紹介した長兄は、1967年のアルバムSgt. Pepper's Lonely Hearts Club Bandの「はっ飛びぶり」についていけなくなって、以降彼らのレコードを買わなくなってしまった。
むろん「くすり」だけが彼らを劇的に変えてしまったのではないにせよ、彼らの音楽的そして容貌的な大変貌の主原因のひとつだったのは否定しようがなかろう。
特にJohn Lennonは鬱病に罹っていたと言っても間違いはない。1970年の彼の問題作Godで、彼が「I don't believe in Beatles」と歌ったとき、私は本当に悲しかった。彼はアイドルの頂点を極めた1964年にはもうすでに未曾有のアイドルBeatlesの一員であることで深刻なidentity crisisに陥っていたのだけれど、まだ幼稚園児だった私は(いや、ほとんどどんな人も)そんなこととは露知らず、小6から中1にかけて件のGodを含む彼のソロアルバムを聴いて大ショックを受けたのだった。
高校生になりBeatlesがドラッグの常習者(だった)と知って、それはアーティストしては<ずるい>行為だと思うところがあった。「薬」に頼ってできた歌は、スポーツならドーピングで記録を出すのと同じことだと。
しかし、冒頭のNHKの番組を見て考えが変わった。Beatlesは、特にJohnは、マリファナやLSDにより、「clown(道化者)」になっている自分に塞ぎ込む鬱の症状を緩和していたのだ。
いいや、それで彼が薬物をやったことを全面的に肯定するとかと言いたいのではない。もちろん彼我のとんでもない才能の差はあるにせよ、私は一生そんなことには無縁で歌を歌える自信がある。向精神薬摂取により何かしらそれまでの自分には作れなかったと断言できるような新境地の歌ができても、ちっともうれしくない。
それでも、Johnは1964年辺りからもう「サイケデリクス」を<服用>して一時的であれ心を安定させたりしていた(つまり創作のためということではなく)のなら、それは体の不調で何か薬を飲むことと大して変わりはないと言えるのではないか、と今は思うのだ。
再度書いておくけれど、私は全くそういうものに頼らずに創作をしてきたこと、創作できてきたことをありがたく思っている。もちろん全く才能の差は果てしなく大きいことを承知しつつ、そう思っている。

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