もうええわ!

オーストラリアでもあの白豪主義の再来かというようなことが起こっているらしい。特に顕著に増え続けるインドからの移民に、主に白人のAussiesが反対を唱えているのだ(March for Australia運動)。

以下はまったくの創作、荒唐無稽なスキットである。

*

遠い先祖がCaptain Cook時代イギリスから渡ってきたと自負するKen:

 「ギリシアやイタリアからの移民に比べ、インド系が突出して我が国へ入ってきている。そう、ホワイトではなく<ブラウン>な者たちが、我が物顔で通りを闊歩し、元々の市民・国民の職を奪い、住宅危機、生活費の高騰を招いている。許し難いではないか!」

最近豪州市民権を得たテルグ語話者のRavi:

「では訊きますが、我々移民なしでオーストラリアの未来はあるのですか。この<Down Under>の広大な国、しかも乾燥した大地だらけの国へ敢えてチャンスを求めてくるインド人もいますが、中でも医療従事者が多いことを知っていますか?いわゆる<エッセンシャル・ワーカー>として来豪し、この国を支えているのですよ。」

Ken:

「そのメリットよりもデメリットの方が大きいって言ってるんだ!しかもあんたらは俺たちイギリス系の伝統文化と決して融合し得ない独自文化をここでも固守して、馴染もうとしない。オーストラリアはイギリス系の人々が打ち建てた国なのだぞ!」

「アボリジニ」と呼ばれるオーストラリア先住民の子孫Tjilpi(チルピ):

「待ってください。この大陸に元々住んでいたのは私たちの祖先です。ヨルング、ワルピリ、アランダなどさまざまな部族です。私たちのことを無視して話を進めないで。」

Ravi:

「そうですよ。あなた方白人は16世紀ぐらいからヨーロッパでの同人種間抗争で武器開発や航海技術を世界の他のどの地域よりも早く発達させた。そして後に貪欲さと冒険心で世界を蹂躙していった。勝手に自分らがどんなことでも優越していると勘違いしてね。」

Tjilpi:

「私たちの部族では、初期イギリス系植民者の横暴さ、残酷さが語り継がれています。粗暴な人だらけだったって。流刑者が多かったんでしょう?」

Ken:

「ふん。それはよく言われることだな、初期オーストラリアはconvict(囚人)入植者の国ってな。しかし歴史的に確かにそうだが、そのことを今では国民の2割を占めるそのconvictsの末裔は恥じてはいない。むしろ誇らしい。ケイト・グレンヴィルの小説『The Secret River』を読んだか?その囚人らがいかに苦労して、逆境を乗り越えて、この国を造ったことか。」

Ravi:

「その<Convict Pride>が後に養われたと同様の体験を今私たちインド系移民がしているのですよ!分かりませんか?」

Ken:

「はあ?何言ってんだ。」

Ravi:

「もちろん私たちはインド本国で囚人であったわけではない。けれども、オーストラリアの未来を拓く人的資源として海を渡ってきたことでは同じでしょう?」

Ken:

「その人的資源は、イギリス系でないのなら、今までにも実績のあるギリシア人やイタリア人などに期待するっつってんだ。」

Ravi:

「白豪主義の復活ですな。」

Tjilpi:

「また私たちが置き去り。」

Ravi:

「・・・私らインド人は大雑把に言ってアーリア系ですよ。インド・ヨーロッパ語族というでしょう。我々は白人と元々の血統は同じなのです。」

Tjilpi:

「ちょ、ちょっと!」

3人の会話を聴いていた大学教授Peter:

「テルグ語は印欧語に含まれないよ、Ravi君。ドラヴィダ語族だ。」

Ravi:

「で、でも、私印欧語のヒンディー語も理解しますし、サンスクリットだって。私の母方の祖母の父はカースト上位の家の娘と結婚した人で・・・」

Tjilpi:

「みんなホモ・サピエンスでしょ!もうええわ!」


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