昨夕、調布市の野川。不思議な空。何かの影が伸びる。
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先ほど自転車を漕ぎ出すと、速度計がまったく働かず、あれあれと思っているとエラー表示が出て、電気の供給が切れてしまった。バッテリーをはめ直したがダメ。敢えなくポタリング中止。
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もう数日前のことだが、CS放送で『椿三十郎』(東宝映画1962年)の4Kリマスター版が放送され、狂喜して録画、すでに2回ほど観たことがあったけれど、今度はdetailsにもこだわって鑑賞した。
今回特に気づいたのは、青年武士・井坂直人を演じた加山雄三さんの名演だった。そして田中邦衛さん。1961年にスタートした『若大将シリーズ』での「青大将」の人物造形においてもそうだが、井坂の仲間の青年武士「木村」を演じた田中さんは「foil」としてやはり加山さんを引き立てた。
「foil」とは、古フランス語の「feuille」(葉や薄いシート)に由来し、ラテン語の「folium」(葉)が語源だ。<元々は「背景として何かを引き立てるもの」を意味し、宝石の輝きを高めるために金属箔を背景に使う慣習から、文学での「引き立て役」の意味に発展し>たとのことだ。そう、「アルミフォイル」とかでの「フォイル」、金属箔だ。
椿と仲代達也さん演じる室戸半兵衛による有名な決闘シーン、すなわち椿と室戸という二人の「鞘に入っていない、抜き身の刀」のような侍同士の凄絶な決着のつけ方に、青年武士たちが息を呑む・・・そして井坂(加山さん)が「お見事!」と沈黙を破り声を上げるのだが、椿が、「聞いたふうなことをぬかすな!」と憤然と叱責する。窘められたときの井坂の表情たるや!
三十郎は、殺し合いなど無益であり、本当は避けなければならないことを、「本当に良い刀は鞘に入っているもんだ」という比喩で教える。
そしていよいよ三十郎が「あばよ」という前のシーンだ。井坂は目に涙を溜めている。本当の武士とはどういう人物、人品なのかを具に見せられ感動する井坂の健気な表情に打たれる。井坂はそして土下座し、三十郎に感服し、感謝する。仲間の青年武士たちも続く。
あらためまして、加山さんはすばらしい役者です。
・・・そして三船さんの演技、本当に痺れる。なんという圧倒的な人間力だろうか。存在そのものに力が横溢している。こんな俳優、もう二度と出ないと心から思う。ちなみに三船さんは陸軍航空科上等兵で、神風特攻隊員を見送った立場だったという。戦争の悲惨、愚かさを身をもって体験した人だ。
さて、その上述のシーンは御殿場で撮られたが、この映画の多くのシーンはもちろん東宝の砧撮影所(世田谷区砧7丁目および成城1丁目)で撮られた。そう、私の住むところのすぐそばと言っていいところだ。その事実が本当にうれしい。三船さんのご自宅や制作会社三船プロが在った成城は私が毎日のように行くところだ。さらに室戸半兵衛を演じた仲代さんも、ご近所(世田谷区岡本1丁目)さんで、お健やかに暮らしていらっしゃる。それがまたうれしい。
そして最後に、この映画を、もちろん他の歴史的傑作を監督した黒澤明さんも、成城で亡くなったけれども、狛江にも住まれ、多摩川で釣りをする人だった。私のような<砧・狛江・調布の人間>にとってはもうただただ親しみが湧き、もちろん憧憬もひたすら強い。
夏休みが取れたら、新潟村上(戊辰戦争で奥羽越列藩同盟の大義を貫き切腹した最年少家老・鳥居三十郎に再び哀悼の意を表すため)経由で北上、三船さんのお父上の故郷秋田県由利本荘市鳥海と黒澤さんのお父上が生まれた秋田県大仙市豊川を<表敬訪問>しよう。
鳥居の辞世
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さて、三船さんと黒澤さんの故郷と言ってもいい秋田だけれど、戊辰戦争時、秋田藩(久保田藩)は奥羽越列藩同盟を早々に裏切り、西軍(新政府軍)に寝返った藩として東北と新潟(新発田は除く)では悪名高い(笑)。
まさか「いい刀は鞘に入っている」を実践したか。
再び(笑)。
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