2025 皐月雑記 1 〜雲、チーム内競争
5日前の夕暮れ時、こちらの目ではもう富士や丹沢の稜線下に沈んだ夕日ではありましたが、高い高い雲はまだその光を受けて天辺が茜色に染まるのでした。
David Gatesが「Of all the wonders I was one allowed, I think that I would always choose a cloud.」と歌っていますが、私にとっても雲は何より心惹かれる自然現象です。「Always brings my feelings right out loud, whether I am ashamed or proud」と見事な韻を踏み続けながら、第2スタンザが終わります。
すべての驚異の中私がひとつ挙げるのを許されるなら
私はいつも雲を選ぶでしょう
いつも私の気持ちを声高くあらわにしてくれるのです
私が恥じ入っていようと、あるいは誇らしくいようとも
(MNEMO訳)
若い頃はね、そういうことでしたよ、私も。
今は「行雲流水」の「雲」ですよ。
執着なくただ自ずと流れて行けばよいという境地に至った?
いいえ、そうありたいなと思う対象のままです、おそらく最期まで。
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鹿島アントラーズ4連勝、首位キープ。
YouTubeでサガン鳥栖から数年前鹿島へ移籍した樋口雄太選手が鹿島のチームとしての凄さを語っている。「Zicoスピリット」が透徹している、タイトル獲得数1位で、一度もJ2に落ちたことのない(これについては横浜Fマリノスも同様、つまり2チームだけ)集団の構成員一人ひとりの意識と能力の高さを絶賛しているのだ。
昨日はやはり元々サガン鳥栖ユース出身の田川享介選手が鹿島移籍後初ゴール、それが決勝点になった。
私が書きたいのは、実績的に日本最高のチームへ他チームから移籍して活躍するということの難しさ、なのだ。みなレギュラー争いに文字通り血眼で、常にチーム内で競争状態にあって、ほぼ一日たりとも気が抜けない状況が続く。むろんそれは生え抜きの選手にとっても同じなのだけれど、彼らはみな最初から鹿島の過酷さを知っている。
昨日の田川選手の喜びようと言ったらなかった。絶対FWであるレオ・セアラの欠場を埋める立場で、そのチャンスをものにしたと言っていい。むろんレオが戻ってきたら(実際昨日復帰した)またもやサブへ回るだろうけれど、それでも実績を出した事実は残り、レオが後半引っ込んだりしたら、「スーパー・サブ」的な切り札として扱われる可能性も出てきた。
どのチームにだってメンバー同士の競争はあるに決まっている。しかし人生を賭けて他チームから移籍してきた選手というのは、埋もれてはならないと日々必死なのだ。しかも鹿島アントラーズのような熱い選手層を持つチームでは、埋もれてしまう確率の方が高い。それを、「against all odds」で跳ね返すことの凄さはどんなに賞賛してもしきれない。
私は<バンドというチーム>に属した者として、そういう経験はほとんどない。最初のバンドは、金子さんが呼びかけてくれて参加、ヴォーカルというパートで金子さんとリードを分け合ったけれど、競争ということではなかった。それでも、特に松川敬一くんの抜きん出たドラマーとしての力量に刺激されたというのはあった。そして川口功くんの作曲能力にも。
その後Mick師に見出していただき、安里くんや治雄ちゃん、野澤くんと合流、そのときバンド内オーディション的にあるリハーサル曲に私が自由にメロディーと歌詞をつけて唄った。それを3人が認めてくれたのだ。
ヴォーカリストは私しかいなかったから、そのパートでの争いはなかったけれど、しかし、「世界を目指す」と言っていたEUROXにおいては、そういうレベルに達した歌を唄わねばならなかったし、他の各パートのみんながやはりそういう意識で研鑽を怠らなかった。そして私はG Stringを主宰することになり、バンド内競争からは一歩退いた立場になった。
痺れるようなチーム内での競争は、だから、EUROXにおける一年足らずのことだった。
もう高齢者となり、これから最後の音楽活動に勤しむこととなって、今はProject Hydrangeaのメンバーたちのこれまでの個々の研鑽の成果を提供いただく立場となっている。それは競争というよりも、互いのmusianshipへの尊重、その融合という作業になる。
「なる」と言っているが、ある程度の未来を俯瞰してのこと。おい、俯瞰はいいが、辿り着けるのか。時間がねぇかも、だぞ。
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